賢者の子供達 Advent Braves 第二話「Calm Terrorr」

第二話「Calm Terrorr」


 ここはテレビ朝日。とあるスタジオではQさま収録のための準備が行われていた。
 一方で、カズレーザーはスタジオに向かう道中ですれ違う人すれ違う人次々に声を掛けていた。一礼で済ませる人、ちょっと世間話をしてくれる人、反応は様々だった。
 そんな中で、志島の後姿を見つける。ちょっとしたいたずらをしかけてやろうという気持ちが湧いてきた。
「志島君!」
「わっ!?」
 カズレーザーが背後からそっと忍び寄り、肩を叩きながら気持ち大きめに声を掛けると、志島は驚いた勢いで転んでしまった。
「やっべえ! 志島君大丈夫!?」
 まさか転んでしまうとは思わなかった。ちょっと驚かしたかっただけなのに。慌てながらカズレーザーは転んだ志島の手を取り、起こした。
「ごめん!」
「あ、いえ、僕もちょっとびっくりしすぎたんで……あ、あれ?」
 顔のあたりをぺたぺたと触りながら、今度は志島が慌てふためく。
「眼鏡がない!」
「え!? あ、これだ!」
 志島は転んだ勢いでかけていたメガネを落としたらしい。カズレーザーが足元を見ると、志島のものらしき眼鏡が転がっていた。
「大丈夫? 壊れてないかな?」
「ちょっと見てみます」
 志島はカズレーザーから眼鏡を受け取ると、レンズやフレームを確かめるように眺めはじめた。
「フレームは……曲がってないか」
「そのメガネって高い?」
「えーっと、特注品で十万しました」
「え、うそだぁ!?」
「はい、嘘ですよ。一万円ぐらいです」
「な、なんだ! びっくりしたぁ! 志島君何でそんなウソついたの!?」
「カズさんには驚かされたから、ちょっと驚かし返しただけですよ」
「……反省しまーす」
 悪戯気味に笑う志島と、大げさに落ち込んで見せるカズレーザー。不思議な対比が出来上がっていた。
「……レンズも傷入ってるわけやないし、大丈夫ですね」
「あー、びっくりしたぁ。驚かすつもりが結局驚かされちゃった。反省反省」

「ところで、僕に声を掛けてきたってことは何かあったんですか?」
 眼鏡ケースから取り出した布で眼鏡を手入れしながら、志島が尋ねた。
「別に用があったってわけじゃないけど……あ、でも天明さんが無事だって言うのは聞いた?」
 前回、Qさまの収録があった時の話だ。出演予定だった天明がテレビ局に向かう途中で倒れ、病院に運ばれたのだ。その後意識を取り戻し、特に異常も無かったので過労と判断された。実際、意識を取り戻した天明は今までと変わりなく活動を続けていた。
「そうやったんですか。それなら、よかったです」
「志島君、ずっと天明さんのこと心配していたもんね。けど……」
「けど?」
「今度はミラクル9の収録前に、高橋英樹さんが倒れたってのは聞いた?」
「え!?」
 天明が倒れてから数日後に、テレビ朝日ではミラクル9の収録が行われる予定だった。しかし、参加予定だった高橋英樹がテレビ局に向かう途中で倒れ、病院に運ばれた。ミラクル9の収録は高橋の代わりに別の芸能人が入ると言う形で行われた。高橋は搬送先の病院ですぐに意識を取り戻し、本人は「この年で無理をしすぎたかな?」と笑っていたと言う。
「あと、これはさっき宇治原さんから聞いたんだけど、ネプリーグでも参加予定だった人が倒れたんだって」
「ネプリーグでも……それって、また過労ですか?」
「そういうことなのかな。意識は戻ったって聞いたから……最近みんな忙しいからかなぁ」
「そうやとしたら、カズさんも気を付けないと。かなり忙しいんですよね?」
「うーん、俺のところは事務所がある程度休みを確保してくれるから、過労で倒れるってことはないと思うけど。志島君も気を付けなきゃ!」
「いや、僕はそない忙しくないんで……」
「あの、二人とも、何の話をしているんですか?」
 二人に声を掛けてきたのは、天明だった。
「天明さん……」
「えーっと、志島君と「天明さんは無事」って話をしていたんだ。もう大丈夫なんだよね?」
「はい。あの時はご迷惑をおかけしました」
「いいっていいって」
「志島君も」
「……あの、天明さん、ほんまにもう大丈夫なんですか?」
 志島が天明をじっと見て、険しい表情で問いかける。眼鏡を手入れする手は止まっていた。
「え?」
「ほんまにもう、何ともないんですか?」
「何も、ないですよ? ほら、この通り」
「そうですか……」
 口では納得したようなことを言うが、志島は首を傾げていた。
「じゃあ、収録で」
「ばいばーい!」
 カズレーザーは天明に明るく手を振った後、志島に厳しい目を向けた。
「ちょっと志島君、今の何! ちょっと天明さんに失礼じゃない!?」
「すみません……」
 眼鏡をかけ直しながら、志島が小さい声で謝った。
「けど、僕には天明さんがちょっと無理しているように見えたんです。顔色、何や悪かったし」
「顔色……悪かったかなぁ? 俺はいつもと変わらないと思ったんだけど」
「それやったら、僕の考えすぎ……ですよね?」
「きっとそうだよ!」
「そうですよね! 考えすぎたんや! 高橋さんまで倒れたって聞いて、ちょっと心配しすぎたんかも」
 安心した矢先、二人を横切るように次々とスタッフが通り過ぎた。それはどこか慌てているようにも見えた。
「……騒がしいですね。Qさまっていつもこんなに慌ただしいんですか?」
「いや……」
 カズレーザーの経験では、Qさまがここまで慌ただしくなったことは一度しかなかったように思う。そう、あの一度だけだ。
 緩やかに危機感が沸き上がる。あの時の感じと同じだった。
(いや、まさか?)
 赤いランプが点滅し、警報が鳴り続ける感覚だ。
(志島君の影響で、俺まで考えすぎるようになったわけ?)
 そんなわけないと思いたかった。あってくれるなと思った。
「……あの、何かあったんですか?」
 意を決して、すれ違ったスタッフに声を掛けた。
「また出演者がこれなくなったんですよ。今度は二人、才木さんとなんぶ桜の澤山さんが」
 どうして来れなくなったの? と問う前にスタッフが続けた。
「テレビ局に向かう途中に倒れて、病院に運ばれて。今回見届け人はザキヤマさんしかいないからあと一人足りなくて、今から代わりを何とかブッキングしなきゃならないから慌てているんですよ」
 簡潔に告げて、スタッフは走り去った。
「カズさん……ほんまに、僕の考え過ぎなんでしょうか?」
 呆然としているカズレーザーに志島が声を掛ける。
「何が……?」
「クイズ番組に出る予定の人が立て続けに倒れる。そんなことって、あるんですか?」
「……あるかもしれないし、ないかもしれない」
 今までの芸能界の歴史を振り返れば、何らかの理由で芸能人が倒れることはあったはずだ。芸人がインフルエンザでダウンしたという話は毎年あるような印象だった。しかし、クイズ番組に出る予定の人間がピンポイントで立て続けに倒れるということはあっただろうか?
「いや、ないですよね?」
「そりゃあ、俺は聞いた事が無いけど……」
「ないですよね……一応、宇治原さんに聞いてみます?」
「いや……多分、ないって答えると思うよ」
「そうですよね……」
 誰もが心の中で不安と疑念を抱えたまま、それでも代わりの芸能人を入れてQさまの収録は行われることとなった。

 Qさまの収録が終わる頃にはもう、外は暗くなっていた。街灯がうっすらと照らしている道を小僧がとことこと走っている。誰かを探すようにきょろきょろとしながら、一生懸命走っていた。
「探さなきゃ! 探さなきゃ! カズレーザー君を探さなきゃ!」
 時々ずれおちそうになる眼鏡を上げながら、小僧は走り続けた。

 Qさまの収録終了後、控室に戻った志島は真っ先に携帯電話を手に取り、メールを打ち始めた。送り先は同期である杯馬だ。
「出来る限り早いとこ田畑藤本の藤本さんに会いたいんやけど、どうしたら会えると思う? 志島」
 打ち込んだメールを送信する。テレビ局を出た頃に、メールではなく電話が返ってきた。
『志島、何やあのメール。何であんなこと俺に聞くねん。藤本さんに会いたいんやったら同じ吉本の先輩で、それも仲の良さそうな宇治原さんに聞いた方がええんちゃうか? お前Qさまの収録終わりなんやろ? すぐにでも聞きに行けるがな』
「普通やったらそうしているけど、出来る限り誰にも知られず会いたいわけがあってやな……そうなるとお前しか頼れるやつおらんのや」
『なんやそれ。けったいやな……藤本さんのファンやから会いたいとかそんな事情やなさそうやな』
「その通りや。頼む!」
『……調べてみたんやけど、田畑藤本は今度ヨシモト∞ホールで漫才やるらしいわ。その漫才終わりにちょっと会えるように、座長から話通してもらったらいけるんちゃうか? それとも、座長にも知られたくないんか、お前が藤本さんに会いたいってことは』
「いや、座長やったら知られてええわ。そうしてくれ」
『けど、会いたい事情は何て言うたらええねん』
「どうしても会いたいの一点張りでお願いします」
『お前……座長に話通して貰うように頼むのは俺やぞ。それに藤本さん側に打診するのは座長やぞ』
「そこを何とか。座長にも藤本さんにも会いたい理由だけはあんま知られたくないから」
『えー……わかった、言うだけ言うてみるわ。失敗しても怒んなよ?』
「失敗せえへんやろ? 杯馬やったら」
『……まぁね。ほな、また電話するわ』
 電話が切られる。志島は深呼吸すると、困ったように呟いた。
「うまいこといって、話してくれるとええんやけど」
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主にヘキサゴンⅡクイズパレード(特に里田まいのおとぼけ)をネタにしていました。現在はブログでクイズ番組(主にQさま)のSSを書いているよ。pixivやっているよ。twitterもやっているよ右側にあるリンクとかから飛び込めるよ。下の方にメールフォームがあります

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