賢者の子供達 Advent Braves 第四話「Yellow Episode」

第四話「Yellow Episode」


「おはようございます! 私は今、人気芸人のカズレーザーさんの家……の近所にあるとかないとかという噂にある公園に来ております!」
「カズレーザー君、何やってるの?」
「一回やってみたかったんだよねー、寝起きドッキリの導入。俺どっちかって言うとドッキリ仕掛けられる側の人間だし。というわけで今回の仕掛け人はこちら、勉強小僧です!」
「もういいよ!」
 あの後、カズレーザーと勉強小僧の二人はカズレーザーの家に入った。しかし入った瞬間にカズレーザーが思い出したかのように「あ、同居人がいるけど気にしないでね」と言い出し、勉強小僧が慌てて「気にするよ! 無関係の人に聞かれたら困るから、場所を変えて!」と怒り、結局近くにあった公園へと場所を移したのだ。

「近くに自販機あるけど、何か飲む?」
「飲まない。お気持ちだけ頂いておきます」
「そう。じゃあ、俺もいいや……でさぁ」
 先程までふざけていたカズレーザーの表情が、真剣なものに変わる。
「単刀直入に聞いちゃうよ? クイズ界史上最大の危機って、何?」
 勉強小僧が手に持っている辞書のようなものをペラペラとめくりながら、口を開いた。
「それはね、クイズ界に対する憎しみや恨みを持っているやつがこの世界で暴れているんだ!」
「なるほど!」
 納得したように手を叩く。しかし、やはり「ん?」と首を傾げる。
「やっぱりよくわからないからもうちょっとわかりやすく説明してくれないか?」
「ですよねー……ごめんね」
 説明が足りなかった。勉強小僧は反省するようにうつむいた。
 しばらくしてから顔を上げ、カズレーザーに問いかけた。
「ところでカズレーザー君。クイズって楽しい?」
「うん、すっごく楽しいよ……って何でそんなことを聞くの?」
「そうだね。カズレーザー君はクイズを楽しいと思っている。けど逆に、クイズが嫌だとか、嫌いだとか、なくなってしまえばいいとか、憎んでいる人もどこかにいるんだ」
「そうかもしれないね」
 気になることがたくさんあったが、あえてカズレーザーは問わずに勉強小僧の話に乗り続けた。今はちゃんと聞かなければならないような気がした。
「クイズってさ、昔からあるでしょ? それこそ、クイズなんて言葉がなかった頃から、クイズみたいなことをやっていたはずだし」
「あー、江戸時代にあった判じ絵みたいなやつもそうかな?」
「そんな昔々からクイズがあって、昔々からクイズを憎んでいて、そのまま亡くなってしまった人たちの意思……まぁ、魂のようなものがこの世界以外の場所に存在していてね」
「……この世界以外の場所ねぇ。それってあの世?」
「そうかもしれない。この世界の人がそう呼んでいるから……それが、この世界に突然現れたんだ」
「え?」
「今まで見つからなかったのは身を潜めていたからなのか、それともこの世界以外の場所からここに堕ちてきたのかはわからないけど、確かに『クイズに対する強い憎悪』がこの世界に現れたんだ。その悪意が暴れていて、黒い影となってカズレーザー君達を襲っていたんだ。まだはっきりとした目的はわからないけど、憎しみが原動になっているのは確かで」
「待って待って、ちょっと、勉強小僧なのに難しい事言いすぎだよ! そんな非現実的でオカルトで世にも奇妙な話、ある?」
「ある!」
「……ははは、あるんだ。俺にはぜんっぜん理解できねぇけど」
 だって、どうしてそこまでクイズを憎むのか。
 どうして亡くなった後ですら憎み続けるのか。
 カズレーザーには理解できないことばかりだった。
 しかし、納得できる部分はあった。
「確かにあいつ、手ごたえなかったな」
 自身を襲った黒い影に空のペットボトルを投げたことがある。すり抜けた。あれが実体のない存在なのはわかった。
「そんな『クイズに対する強い憎悪』の存在に気が付いた『ある人』が、僕を作ってここに送り込んだんだ。『クイズに対する強い憎悪』の正体を突き止めるために」
「そういうことだったんだ。わざわざ遠くからお疲れ様。とりあえず、悪い奴がいるってことはわかった。あれはやっぱり過労なんかじゃなかったんだ!」
 カズレーザーは勉強小僧の頭を優しくなでた。髪の毛を撫でたつもりだが、ぷにぷにとしていた。
「けどあんなやつ、どうやって止めればいいんだ? 手ごたえないし」
「……カズレーザー君は、クイズ界を守りたい?」
 おそるおそると言った様子で勉強小僧が問いかけてきた。
「え?」
「正直、不安なんだ。僕一人の力だけでは止められないんじゃないかって」
「そうなの? だってさっき黒い影を追い払っていたじゃん!」
 勉強小僧がまばゆい光を放ち、黒い影を退けたことは鮮明に覚えている光景だった。
「追い払っただけだよ。それも、いつまで通用するかわからない。僕一人だけじゃあ行ける場所だって限られている。つい最近作り出された存在の僕には頼れる人もいない……」
「だから、こうして話を聞いてくれた俺を頼りたいってこと?」
 勉強小僧がこくこくと頷いた。
「クイズ界を守るだっけ? それってさぁ、俺がやるべきことなの?」
 勉強小僧は「うーん」と困りながら、言葉を続ける。
「強制はできないね……もしも無理なら他の人を探すしかないよ」
「じゃあ、それは俺にできること?」
「……それは、君ならできるような気がする。カズレーザー君は本当にクイズが好きそうだから」
「憎しみに勝つには愛からって言うもんねぇ。最後に愛は勝つってやつ?」
「そう、かも……」
 勉強小僧の困っている様子はあからさまだった。カズレーザーを危険な事に巻き込みたくないという思いと、カズレーザーを頼ってクイズ界を救いたいという思いの板挟みになっているのだろう。
 ならば、カズレーザーが導き出す答えはただ一つだった。
「しょうがないなぁ。ご要望にお応えして、お手伝いいたしましょう!」
 カズレーザーは胸をドンと叩き、勉強小僧に答えた。
「ほ、本当に!?」
「もちろん! この一連の胡散臭い事件にもう片足突っ込んじゃったし、勉強小僧には助けてもらったし、関わるしかないっしょ!」
「ありがとう! 君は本当にお見事ー、だよ!」
 ぴょいんぴょいんと飛び跳ね、勉強小僧は喜んだ。
「あ、でも条件があるな」
「え、何? 僕にできる事ならなんでもするよ!」
「俺をさ、平成教育委員会に出してよ!」
「えー!? 僕にはキャスティングの権限がないから無理だよ!」
「冗談冗談! ファラオさんを出してくれればいいから」
「それは多分僕関係なく出るよね?」
「ですよねー」

「そうと決まったら早速行動しないと! 事態は一刻も早く解決しなきゃならないやつだし」
「何をするの?」
「とりあえず今日は、寝る! 明日も忙しいし。そうだ、勉強小僧も俺ん家に泊まってく? 同居人いるけど」
「同居人がいるなら遠慮しておきます……」
「そんなこと言わないで、寝るとこあるの? いいじゃん、適当な段ボール箱に人形のふりして入っていれば?」
「そうかなぁ……じゃあ、お世話になります」
 ぺこりと頭を下げる。
「で、本格的に行動を起こすのは明日からだ」
「何をするの?」
「とりあえず、俺の知り合いのクイズ作家にこのことを話してみるよ。黒い影のことも、勉強小僧のことも、全部」
「えー!? そんなこと、信じて貰えるかなぁ……」
「わかんない。けど、ひょっとしたら信じてくれるかもしれないし、信じてくれないなら他の人をもっとあたるだけだし。どのみち情報の共有は必要でしょ? そういう話もあるってぐらいは知ってもらわないとやりづらいからさ」
「でもそんなことをしたら、カズレーザー君が変な人だと思われないか……」
「あぁ、それなら大丈夫」
 心配そうな様子を見せる勉強小僧を抱っこして、カズレーザーは笑った。
「俺、元々バグってるし」
 それがさも自身の武器であるかのように誇らしげに言い放った。
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主にヘキサゴンⅡクイズパレード(特に里田まいのおとぼけ)をネタにしていました。現在はブログでクイズ番組(主にQさま)のSSを書いているよ。pixivやっているよ。twitterもやっているよ右側にあるリンクとかから飛び込めるよ。下の方にメールフォームがあります

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