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賢者の子供達 Advent Braves 第七話「Willing Testify」

第七話「Willing Testify」

「やったー、100パー売れたー!」
「早い早い早い!」
 カズレーザーはくりぃむクイズミラクル9の収録に参加していた。持ち前の賢さと明るいキャラクターを存分に発揮し、注目を集めた。なお、百万円はゲットできなかった。

 そんなミラクル9の収録終了後のことだった。収録に参加していた解答者の一人であるラサール石井は個室の楽屋に戻って荷物をまとめていた。この後、クイズ作家の日高が待っている会議室へと向かう。
「……『知恵の欠片』なぁ」
 そこで、カズレーザーにかつてクイズ界で起きた『知恵の欠片』と呼ばれる事件について話す予定だった。『知恵の欠片』と呼ばれる事件はラサールにとって忘れられない事件だった。事件の悲惨さも、自分が何をしたかも、そして最後にかわした約束の事も。
 ブツンッ。
「?」
 ラサール以外誰もいないはずの楽屋で、奇妙な物音がした。ラサールが音がした方へと顔を向けると、そこにあったのはテレビだった。電源は入れていないはずなのだが、ランプが緑に点灯していた。
(あれ? 無意識のうちにつけちゃったのかな?)
 そういうことはたまにある、俺もトシだからなぁ。と自嘲しながらテレビの電源を消そうとした時、画面が明るくなった。
『五年間、お前は俺を待っていてくれたか? もしそうならば屋上で会いたい』
 真っ白な画面に文章が映し出されていた。画面は五秒ほど表示された後、消えた。電源ランプも赤くなっていた。
 怪奇現象の一言で片づけるには、意味がありげだと思った。
(てことはあれは、俺へのメッセージか?)
『五年間、お前は俺を待っていてくれたか? もしそうならば屋上で会いたい』
 メッセージを頭の中で反芻し、しばし考えを巡らせる。メッセージの意図は何なのか? メッセージの送信者と言えばいいのだろうか。それは一体誰なのか?
(五年間ねぇ、ということは五年前に何か……五年前って、まさか!)
 メッセージの意図をなんとなく読み解いた瞬間、送信者も思い当たった。
(もしそうだったらそいつに会いたい、いや、会わないと)
 しかし自分には日高と会う約束がある。どうすればいいのか考えた。
(会うって言っても、ほんのちょっとだろ?)
 考えに考えて、ラサールは日高に「急用ができたので少し遅れる」というメールを送り、楽屋を出た。

 一方でカズレーザーは会議室を目指して廊下を歩いていた。そこには先日約束した通り、日高が待っているはずである。
「おう、お疲れ」
「お疲れ様でーす!」
 狭い廊下でラサールとすれ違う。先程まで一緒に収録に参加していた共演相手だ。
「カズレーザーは……これから何か予定あるの? あっちって君の楽屋とは違うよな?」
「実は僕、クイズ作家から呼び出し食らってるんですよ」
「そうか。実は俺も、クイズ作家に呼び出されてな」
「えー、奇遇ですね!」
「奇遇なことあるか! 日高やろ? そこで君に色々話さなあかんことあるから呼び出されてて……」
 ラサールがどこか怒っているように思えてカズレーザーは困惑した。自分はなにか変な事を言ったのか? 変人だと言う自覚はあるがさすがに今回は普通だったよね? と言い聞かせる。カズレーザーの様子に何か気が付いたらしいラサールが、「ちょっと」とカズレーザーの肩を叩いた。
「ひょっとして俺も一緒やってこと、聞いてなかった?」
「……ああー。すみません。僕、日高さんからそこまで聞いてなかったです。てっきり僕だけ呼び出されたのかと思って」
 ラサールはカズレーザーも一緒に日高と会う事を知っていたが、自分は聞いていないので知らなかった。ゆえにラサールにとっては「カズレーザーも一緒に話をするのわかっていてとぼけている」ように見えたのだろう。
「そうだったんだ。怒ってごめん……」
 先程までの怒っている様子から一転して、急にラサールの声が小さくなった。アラ還クイズ王にそんな態度をとられてはさすがにカズレーザーも委縮する。
「あー、大丈夫っす。じゃあ、一緒に会議室行きますか?」
「いや、それなんだけどさ。俺、ちょっと急用ができたから先に会議室で日高と話していていよ」
「急用?」
「あぁ。多分十分ぐらいで、用事を済ませたら俺もすぐに向かうから」
「はーい!」
 カズレーザーは軽い調子で返し、走った。

「カズレーザーさん、お待ちしていました」
 会議室に入ると、早速日高が声を掛けてきた。日高に促され、カズレーザーは日高と向き合う位置にある椅子に座った。
「えー、本当はもう一人来る予定だったんだけど」
「ラサールさんでしょ? さっきすれ違いましたよ」
「あ、会っていたんだ。ごめんね昨日、メールで伝え忘れていて。まぁ、そういうことだから……とりあえず、カズレーザーさん。君が今知っている情報を聞かせてもらうよ」
「はい、基本NGないんで何でも聞いてください!」
「じゃあ真っ先に聞いておきたいことが一個あるんだけど……勉強小僧がいるって本当?」
「はい! 今も俺のスーツのポケットの中にいますよ。出します?」
「日高君、こんにちはー!」
 甲高い声と同時にカズレーザーのポケットの中に忍び込んでいた勉強小僧が飛び出した。小さかったからだが飛び出した瞬間に一回り大きくなった。日高は思わず勉強小僧を二度見した。
「本物だ、本物の勉強小僧だ。うわー!」
「きゃー!」
 日高は勉強小僧を抱きかかえ、高速で高い高いをするように振り回した。
「メールで話は聞いていたけど、やっぱり実物を見るとびっくりしちゃうなぁ! うわーわーわーわー……っていかんいかん! まずはカズレーザーさんの話を聞かないと! 確認できたからこの件は終わり!」
 自分に言い聞かせるように喋った後、日高は勉強小僧を優しく机に降ろした。

「つまり、一連のインテリな人が倒れたのは過労じゃなくて、『黒い影』の仕業なんですよ。そして勉強小僧は一連の事件を解決するために、ここに来てくれたんです! 信じてください!」
「疑っていない! 疑っていないから!」
 カズレーザーと勉強小僧から語られたSFにすら思える話を、日高はすんなりと受け入れていた。あまりにもあっさり受け入れているため、逆にカズレーザーにとっては疑わしく思えて来た。カズレーザーがあからさまに怪訝な表情を浮かべると、その心情を察したらしい日高が語り始めた。
「と言うのも、五年前にもクイズ界でもSFみたいな事件があったからさ」
「……そうなんですか!?」
 クイズ番組についてはある程度見て来たり調べたりしてきたつもりだったが、聞いた事の無かった話にカズレーザーが食い付く。勉強小僧が「落ち着いて!」とたしなめる。
「僕たちはその事件のことを『知恵の欠片』って呼んでいる。僕はその話をカズレーザーさんにしたくて足を運んだようなものだよ。本当は当事者の一人であるラサールさんからも話して欲しかったんだけど、今、いないもんね……だから僕から簡単に説明させてもらうよ」
「はいはい」
「カズレーザーさんは『賢人(かしこびと)神社』って知っている?」
「すみません、ちょっと聞いた事無いですね」
「そうか……じゃあクイズの神様である『賢者』や『愚者』が祀られている神社が賢人神社ってことだけわかればいいから。解答者も作家もみんなあそこでお参りしているんだ」
「なるほど」
「そのクイズの神様である『賢者』に恨みを持つ『なりそこない』と呼ばれる存在がいて……」
「なりそこない?」
「うーん、簡単にいえば本当は『賢者』になるはずだったのにワケあってなりそこなって、代わりに『賢者』になった人を恨んでいるヤツ、かな」
「はいはい」
「その『なりそこない』が『賢者』をどうにかして殺そうと、当時クイズ番組に出ていたインテリ達を手駒にしようと操っていたって事件があったんだ」
「えー!?」
「『黒い欠片』と呼ばれる物をインテリ達に飲み込ませた。飲み込んだ人はみんな『なりそこない』の手駒になった」
「洗脳ですか?」
「そんな感じだと思う。そうしてその手駒がまた別のインテリ達に欠片を飲み込ませてを繰り返して……僕の知る限り、当時欠片を飲み込んでいなかったのはスタッフとごく一部のクイズ王ぐらいだったんじゃないかな?」
「やばいじゃないですか! そんなのどうやって解決したんですか!?」
「それを解決したのが、その欠片を飲み込んでいなかったごく一部のクイズ王なんだ。彼らは『賢者』が残した『武器』を授けられて、それで身を守りながら戦って、ついに『なりそこない』を倒して平和を取り戻した……というのが、五年前にあった事件なんだけど、信じてくれる?」
「もちろん信じます! はー、だから僕の話を日高さんは信じてくれたんですね」
「うん……けど、僕もこの話は賢人神社に置いてある本からほとんど知ったことでさ。実際にそういうのを見たわけじゃないんだ。だからまさに当事者であったラサールさんに話を聞けたらいいなーと思ったんだけど」
「そう言えばラサールさん、遅いですね……急用は十分で終わるって聞いていたんですけど」
 日高が腕時計を確認する。三人(?)で話をしてからすでに三十分は経っていた。
「あの、日高さん、ラサールさん探しに行きませんか?」
「え?」
「十分で終わる予定の急用ってことは、テレビ朝日のどこかで済ませる用事だと思うんですよ。十分なんて外に出て帰る時間にもならないじゃないですか。だったらみんなにラサールさんがどこに行ったか聞いて、探し出して話を聞いた方が早くないですか? ここで待っているよりはいいと思うんですよね」
「確かに、そうかもしれない……わかった。けど入れ違いになったらまずいからなぁ。誰かスタッフにここにいるように頼むか、メモを残すか……」
「じゃあ、勉強小僧をここに置いていきましょうよ」
「え?」
 突如指名された勉強小僧が困ったように首を傾げた。
「勉強小僧ならラサールさんも知っているだろうし、怪しまないでしょ?」
「いや、そりゃあ知っているだろうけど……知っているの意味が違うと思うけど……まぁ、五年前の事件もあったし、受け入れてくれるか! ラサールさんなら」
「もしラサールさんがこっちに来たらラサールさんから日高さんに「来たよー」って連絡してもらえばいいし、もし俺達がラサールさんを見つけたらここに戻ればいいだけ」
「僕もそれがベストだと思う……勉強小僧さん、お願いできますか?」
 神妙な面持ちで日高が勉強小僧に頭を下げた。
「……わかった! 僕、ここで待っているよ!」
 親指を立てて了承した勉強小僧を見て、二人は勢いよく立ち上がった。
「じゃあ、ラサールさんを探しに行きますか!」
「はい!」
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主にヘキサゴンⅡクイズパレード(特に里田まいのおとぼけ)をネタにしていました。現在はブログでクイズ番組(主にQさま)のSSを書いているよ。pixivやっているよ。twitterもやっているよ右側にあるリンクとかから飛び込めるよ。下の方にメールフォームがあります

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