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賢者の子供達 Advent Braves 第九話「Hero Change」

第九話「Hero Change」


 カズレーザーと日高はラサールをつれて会議室に戻ることにした。その途中で、先程ラサールの居場所を証言してくれた小柄な警備員の男性とすれ違った。
「あ、さっきの警備員さん! さっきはありがとう!」
 カズレーザーが声を掛けると、警備員が足を止めて会釈をした。
「あぁ……ラサールさん、見つかったんですね。よかった、役に立って」
「本当にありがとう! ぜひ名前を!」
「……」
 名前を聞き出そうとするカズレーザーに対して警備員は何も返すことなく、そのまま歩き去って行った。
「……うわー、「名乗るほどのものではありません」とすら言わないなんて、あの警備員さんかっこよすぎない?」
「俺には関わりたくなかっただけのように見えたが……」
「そうですか?」
 どこか浮かれているカズレーザーの肩を、ラサールはペチッと叩いた。

 扉を開けて会議室に入った三人を迎えたのは、二人の帰りをずっと待っていた勉強小僧だった。
「二人とも、おかえりー! あ、ラサール君もおかえりー!」
「うわーっ!?」
 カズレーザーに抱き着く勉強小僧を見て、ラサールは叫びながら後ろへひっくり返った。
「ラサールさん、どうしたんですか?」
「どうしたもこうしたも、え!? こいつ!」
「ラサールさんもよく知っているでしょ、勉強小僧」
「知っている! 知っているけど、勉強小僧って、おるの!?」
「ラサール君、ごぶさたー!」
「マジか……お久しぶりです」
 元気よく挨拶をする勉強小僧に、どうにか存在を受け入れたのかラサールは恐る恐る挨拶を返した。勉強『小僧』相手なのに敬語になっている自分に、ラサールは少し笑ってしまった。

 三人が椅子に座り、勉強小僧は机の上にちょこんと座った。
「つまり、一連のインテリな人が倒れたのは過労じゃなくて、『黒い影』の仕業なんですよ。そして勉強小僧は一連の事件を解決するために、ここに来てくれたんです! 信じてください!」
 最初にカズレーザーが一連の事件の説明をラサールにした。ラサールは話を聞き終えると「……やっぱりな」と短く返した。ラサールの冷静な反応にカズレーザーと日高は首を傾げた。
「ラサールさん、全然驚かないんですね」
「そりゃあなぁ……実はさ、さっき屋上で会ったやつに同じような話を聞いたんだよ。一連の件が過労でも何でもなくて、れっきとした事件であることをな」
「……ラサールさんは一体誰に会っていたんですかね?」
 日高の問いかけに、ラサールはしばし考え込んだ。
「えーっと、カズレーザーが知っているかどうかはわからんけど、『賢者』だよ」
「え、『賢者』って、さっき日高さんが話していた、神様の!?」
「何だ、知っていたのか」
「僕、ラサールさんに会う前に日高さんから『知恵の欠片』のことを話してもらったんです」
「そういうことだったんですか……それで、『賢者』は他に何か話していたんですか?」
「大した情報はねぇよ。そのみんなに悪さしている『黒い影』とやらは『クイズ界に強いと恨みを持っていて、かつ生者以外』で、『賢人神社に深い関係があるわけじゃない』ってことしかわからないってよ。あと、襲われた奴らを元に戻す方法は調査中だとさ。俺が聞いたのはそれだけや」
「へー、それにしてもラサールさんってすごいっすね。神様直々に会いに来るなんて。ちょっと尊敬しちゃいます」
「別に、大した事ないよそんなの……ちっとも尊敬されるようなことじゃない」
 キラキラとした瞳で見つめるカズレーザーに対して、ラサールの態度は冷めたものだった。

「それで、俺は何を話せばいいんだ? 例えば『知恵の欠片』のことで何か気になることとか、あるのか?」
「じゃあ、一個だけいいっすか?」
「何だ? 俺に話せることだったらまぁ」
「日高さんから聞いたんですけど……『賢者』が残した『武器』ってもらえないんですかね? ラサールさん、まだ持っていたりします? あれがあればだいぶ助かるような気がするんですよ。もしまた『黒い影』にあった時に、ズバーンッ! って倒せるかもしれないですし」
「そう来たか。うーん……俺が使っていたやつはもう返しちゃったし、他のやつらも同じはずだ。だから今武器は『賢者』が管理しているはずだし。貰うのは無理だとして、せめて借りるだけだとしても『賢者』に頼んでみないことにはわからないだろうな」
「そうですか……よし、決めました! 僕、『賢人神社』に行って『武器』貸してもらいます!」
「……おいおいおい、本気か!?」
「マジもマジ、100パーマジっすよ」
「いやいや、カズレーザー! 何でそんなジブンから危険なこと危険なことへ突っ込んでいけるんだよ!?」
「だって、勉強小僧と「クイズ界を守る」って約束しちゃいましたし。僕がやらなきゃ、もう誰もやる人いなくなっちゃいますし。それに僕、クイズ好きですし、守ってやりたいんですよ。相手の正体がわからないならもう、襲って来たとこを返り討ちにするぐらいしか手が無いかなーって……みんなが危ない状況であんま、待ってられないでしょ?」
 ニコニコと笑いながら答えるカズレーザーに、ラサールは驚きの表情を浮かべた。
「……噂通り、だいぶ、バグッてるんだな」
「はい! 五年前のラサールさんみたいに」
「俺はバグッてない! なりゆきでああなっただけだ!」
「まぁまぁまぁまぁ! 二人とも落ち着いてください!」
「僕はラサールさんや日高さんに何と言われようと、行きますからね!」
「……君の決意はわかった。本当だったら過去の事件の経験者として止めなきゃならないんだろうが、そういうことなら俺はもう止めないよ。君達がクイズ界を守ってくれ。俺はいい報告を待っているとするよ」
「あれ? ラサールさんは何もしないんですか?」
 ラサールの英雄としての活躍を知っていた日高が疑問をぶつけた。ラサールは目を伏せ、無言で首を縦に振った。
「悪いけど日高、俺は何もしない。こうやって俺が知っていることの話だけならしてやれるが、正直これ以上この件に関わるつもりはない。『賢者』にもそう伝えた」
「どうしてですか!?」
「今の俺が君たちをいつ裏切るかわからないからだ……実は俺も数か月前、『黒い影』に襲われていた」
「え!?」
「かもしれないんだ」
 一呼吸おいてから、ラサールは自身の頭を刺しながら言った。
「かも? ラサール君、どういうこと?」
 後に続いたラサールの言葉に勉強小僧は首を横に傾けた。
「数か月前の夜だったかな。家に帰る途中にさ、気が付いたら気を失って倒れたみたいなんだ。たまたま通りかかった人に気付いてもらえて、病院に運ばれたらしくてな……朝になったら目が覚めて、医者から過労だって言われて、俺もあの時は過労か何かだと思っていたんだ。けど、同じような事が他のクイズ番組関係者にも起きているって噂を聞いて、怪しいと思って、『賢者』の話を聞いて確信した。つまり、俺もそうだったんだなってなぁ」
 冷製に自身の状況をラサールは分析し、語る。
「そんなことがあったなんて知りませんでした!」
「プライベートな時間の出来事だからしょうがないよ。今までの事件だって、気づいてもらえたのはクイズ番組の収録に向かう前に倒れたやつぐらいだろ?」
「え、じゃあ、僕達が知っている以上に被害者ってもっといるかもしれないってことですか?」
 カズレーザーの一言に日高がハッとした。
「……クイズ番組関係者全員に一度、倒れた事がないか聞き込みをしたほうがよさそうですね」
「そうした方がいいと思う。話を戻すぞ。そうなると、もし襲われた人間が『黒い欠片』を飲んだのと似たような状態になっているんだとしたら、俺は君たちの味方とは到底言えない。今のところそれらしき症状はないからわからんが、最悪の事態を考えて警戒はしておきたいからね。もし俺に近づいたところを刺されたら、終わりやろ?」
「確かに『黒い欠片』だと、剣を出したり超能力を使えるようになっていたから、危ないですね」
「だから、俺に頼らない方がいいし、何か情報が入ったとしても俺には入れない方がいい。君達が不利になるだけだ」
 味方とは言えないと言いながら、ラサールはあくまで冷静にカズレーザーに道を示す。話を聞きながらカズレーザーは「やっぱり、バグってんじゃん」と思いながら感心した。
「もし何かあったら辰巳や宇治原、あとはやく君や宮崎あたりに頼った方がいい。あいつらは『武器』を持って戦ったやつらだからな、きっと頼りになると思うよ。事情を説明したらだいたい信じてもらえると思うし。特に宇治原なんか、五年前も積極的に戦ってきたやつやし一番頼りになるんちゃうか?」
「わかりました。話を聞かせてくれてありがとうございます……僕、絶対クイズ界を救ってみます。みんなを元に戻す方法も見つけて、ラサールさんのことも助けます!」
「ありがとう。そこまで言ってくれるなら、俺も君に全てを託すよ……そうだ、紙とペンはないか?」
「僕のでよければ」
 日高から一枚のメモ用紙とボールペンを受け取ると、ラサールは何かを書き始めた。そして、カズレーザーに渡した。
 メモ用紙に書かれていたのは『カズレーザー、君にすべてを任せる。クイズ界を救ってくれ』という言葉とラサールのサインだった。
「別にうぬぼれているわけじゃないが、これを『賢者』とか事情を知っている他のインテリ芸能人とかに見せれば、多少は協力的になってくれるかもしれないと思ってね」
「ありがとうございます!」
「……ただ、絶対に無理はするなよ!」
「僕も、カズレーザー君を守るよ!」
 ラサールがカズレーザーに手を差し出す。カズレーザーはその手をしっかりと握り返し、誓った。勉強小僧もまた二人の手をぎゅっと握り、守ることを約束した。
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主にヘキサゴンⅡクイズパレード(特に里田まいのおとぼけ)をネタにしていました。現在はブログでクイズ番組(主にQさま)のSSを書いているよ。pixivやっているよ。twitterもやっているよ右側にあるリンクとかから飛び込めるよ。下の方にメールフォームがあります

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