FC2ブログ

賢者の子供達 Advent Braves 第十二話「Adjoining Partner」

第十二話「Adjoining Partner」


『あ、そうや。藤本さんって、ええ相方さんとコンビ組んでるんですね』
 志島から言われたことを思い返しながら、藤本は頭を抱えていた。
(あの言葉はそういうことやんな? 志島君に全部バレてたってことやんな?)
 藤本が自問自答を繰り返す中で、トントントンと控えめにノック音が響いた。藤本が「ええで」と返すと、部屋の扉が開かれた。
「おーい藤本、とりあえずはお疲れさん!」
 入って来たのは藤本の相方である田畑だった。田畑は観葉植物に近づき、幹にくっつけられていた物体をはがした。
「それで……お前わかりやすいねん! 顔に出過ぎや!」
「え!?」
 いきなり飛んできた田畑の厳しい言葉に藤本は困惑した。

 ひとまず藤本は田畑に座るように促した。田畑藤本が机を挟んで向かい合う形となる。
「お前、ジブンでは気づいてなかったかもしれんけどしょっちゅうこれ見てたで!?」
「マジで!?」
 田畑は観葉植物からはがした物体――小型カメラを見せながら藤本に指摘した。
「そんなカメラ目線やってたら志島君にここにカメラあるって気づかれるに決まってるわ! それやったらお前に仕掛けた場所教えとかん方がよかったわ!」
「そうやったんか、道理で……すまん! 映りを気にしすぎた!」
「さすが『今夜はナゾトレ』に出ているタレントさんやなぁ! 映り気にしおって!」
「そんなつもりやないけど!?」
「まぁバレた後に壊されなかったからよかったけどな。ちゃんと録画もできてるみたいやし……何より、藤本が無事でホンマによかったわ」

 話は藤本がルミネに楽屋入りした時間までさかのぼる。その時の藤本は志島に会う事で頭がいっぱいで田畑とネタ合わせをしていても話が全く入って来なかった。
(何を話す? 何を聞く? そもそも一対一で会うてよかったんか?)
 自問自答を繰り返す。今更悩んだところでどうにもならないとわかっていたのに。
「なぁ藤本。どないした? お前さっきからおかしいで?」
 藤本の様子が尋常ではないことに気付いたらしい田畑が声をかけてきた。
「何や全然元気ないし、ボケのタイミングもずれてるし、セリフも流暢ちゃうし。どういうこと?」
「田畑……それがやな……」
「え、なに?」
「実はこの後志島君って人に会うんやけど――」
 このままでは漫才に支障をきたしてしまう。隠すことができないと思った藤本は、田畑に正直に現在の心境を話した。【知恵の欠片】に関わることや今のクイズ番組の異常事態に関係することは無関係な田畑には隠してもよかったはずなのだが、一度話しだしたら止まらなくなってしまい、結局すべて話してしまった。珍しく感情が乗ってしまったため上手く話せた自信はなかったが、田畑はうんうんと頷きながら話を聞いていた。
(結局、ほとんど話してしもた)
 相方を巻き込みたくないという心配を上回るほど、吐き出して楽になりたかったんだと藤本は思った。
「まぁ、そういうことや。田畑。ご」
「藤本、はよ言えよそういうことは!」
 ごめんなと謝ろうとした藤本を遮るように田畑はツッコミを入れた。
「何やったらクイズの世界か? そっちがおかしくなった時から言うてくれてもよかったのに! 何でそういうの隠すねん!」
「だって、言うてもそれは田畑には関係ないことやし」
「確かにクイズに限って言えば俺なんか1ミリも関係ない。けど、漫才のことやったら関係ある。相方やからな」
「それはそうやけど」
「それに、それにや。俺はもうあんな思いはしたないんや……お前が何か事件に巻き込まれて、苦しい思いして、一人で抱え込んでいるなんて状況、絶対いらんから! ごめんやからな!」
 田畑が思い出したのは【知恵の欠片】のことだった。確かにあの頃の藤本の様子はおかしかった。やたら宇治原に執着しているような気はしたし、傷を負っていることもあった、本人は「ちょっと転んでもうた」と笑っていて、田畑も「お前学歴だけは最高なんやから頭だけは大事にせぇよ」と軽い気持ちで返していた。
 しかし、後になって先輩である宇治原から話を聞いて、あの時の藤本がどういう状況に置かれていたのかを知った。【知恵の欠片】という事件に巻き込まれていて、藤本は悪い奴に操られて、不本意にも戦いに駆り出されていたのだ。いつ駆り出されるかわからない戦いの中で安らげる時間などきっとなかったのだろう。思い返してみれば、藤本はやたら眠たそうにしていたような気がした。
 気づいてあげられなかったことを悔やんだし、相談すらしてもらえないほど自分は頼りにならないのかとも思った。しかしもう終わっているならしょうがない、今が平和ならばそれでいいと思い藤本には何も言わなかった。せめていつも通りの自分でこれからもいようと思った。
 だから藤本に今の状況を打ち明けられた時、田畑は心の底から怒ったし、藤本の事を心配したのだ。そして何より、自分にできることはないかと必死で考えた。
「……そうや! その話し合いの様子を録画とか、モニタリングとかせえへんか?」
「録画しといたら何かの役に立つかもしれへんし、見張ってたら何かあった時に助け呼べるかもしれへん」
「そうや、俺にそれやらせてくれ! お前は普通にやっててくれたらええから、な?」
「これで心配事少しはなくなるやろ? 安心して漫才できるんちゃうか?」
 あとはまくしたてるように藤本に提案し、断ろうとしていた藤本に無理やりに近い形で録画とモニタリングを承諾させたのだ。

「藤本、録画したやつはどうする?」
「とりあえず宇治原さんに提出したいから、データコピーしてこっちに送ってくれへん?」
「わかった、任せとけ!」
 グッと親指を立て、田畑がスマートフォンを操作し始めた。
「あの、田畑」
「ん、何?」
 ごめんな、迷惑かけて。
 田畑にそう言いかけたが飲み込んだ。その言葉は今の田畑には相応しくない。
「ありがとう、手伝ってくれて」
 こっちの方がより正確だと思った。藤本の考え通り、田畑は嬉しそうに笑い、すぐさま視線をスマートフォンに戻した。

「これでよし! 藤本、受け取れ!」
 録画データの処理が終わり、藤本に渡された。
「それで、これからどないする? 実質アテは外れたってことになるやろ?」
「うーん、僕があの事件に対してできることなんてたいしてないから、基本的には宇治原さんに任せることになりそうや……けど、倒れたりせんようにせいぜい気を付けることにするわ」
「そやな。ほんまにそれだけは頼むで、相方?」
「うん」
「あー、とりあえず終わった思うたら喉乾いてきた……水いるか?」
「うん。悪いけどとってきてくれへん? 何や足がすくんでうごかんから……」
「しゃーないな! ちょっと待っとけよ!」
 水を取りに部屋を出る田畑を見送りながら、藤本はまだ田畑にも話していない疑問点の考察を始めた。
『あ、そうや。藤本さんって、ええ相方さんとコンビ組んでるんですね』
 あの時カメラの存在に気が付いたと思われる志島は、どうしてこんな遠回しな表現をしたのだろうか? それが藤本の中に残った最大の疑問だった。もし志島に壊す意図も何もないならわざわざあそこで言う必要はないし、黙って部屋を出ればいいだけだったはず。カメラの存在に気が付いた上でわざわざ言うということは、何らかの忠告や示唆の意図があったと考えるのが自然だ。
(そもそも、あの言い回しはおかしいやろ……何故、相方のことに言及した?)
 カメラを見つけたことを表現するだけならば「カメラがここにありましたね」と言うだけでいいはずだ。
(わざわざ相方の事を出した理由は……例えば、相方があのカメラを設置したことを見抜いていたって考えられる。僕やなくて……あれ? 何で志島君は僕がカメラを設置したんやなくて、相方が設置したってわかったんや? 普通やったらまず僕が設置したと考えるはずや。まさかクイズ番組一切関係ない僕の相方が仕掛けたなんて思い至らんやろ!)
 藤本は志島と話し合って、志島に対する疑いは晴れた。今、疑念を抱いているわけじゃない。ただ、自身の全てを見透かしてきた志島に改めて得体の知れなさを覚えたのだ。
「持ってきたでー藤本……藤本、どないした? 顔色悪いで?」
「この状況でつやつやとしていられるわけないやろ」
「それもそうか。ま、とりあえず水を飲もう! ここでへこんでいたら次のステージ、もたんから!」
「そうやな。ちゃんとせなあかんな……」
 さすがにこんな不安までは田畑に打ち明けることはできないなぁ、と藤本は思った。そこまで甘えるのはどうしても遠慮してしまうし、甘えすぎて相方が離れてしまったらと思うと、どうしてもできなかった。
スポンサーサイト
プロフィール

特効さん

Author:特効さん
主にヘキサゴンⅡクイズパレード(特に里田まいのおとぼけ)をネタにしていました。現在はブログでクイズ番組(主にQさま)のSSを書いているよ。pixivやっているよ。twitterもやっているよ右側にあるリンクとかから飛び込めるよ。下の方にメールフォームがあります

期限無き投票
ヒマがあったら投票していってくれちょ。
最新記事
月別アーカイブ
カテゴリ
メールフォーム
特効さんと相互リンクしたい人、拍手では言えないことを言いたい人はこちらからどうぞ
カウンター
pixiv
特効さんの絵だよ
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード
検索フォーム