賢者の子供達 Advent Braves 第十三話「Pious Martyr」

第十三話「Pious Martyr」

「時は来た。それだけだ!」
 とあるピンの仕事を終えたカズレーザーは、フジテレビテレビの楽屋で真っ赤なスーツに着替えていた。
「時が来たって、大げさだよー。別に神社だからってスーツ来ていかなくてもいいと思うんだけど」
 カズレーザーの着替え姿を見ないように、勉強小僧は手で目を覆い隠している。
「まぁでも、「武器ちょーだい」って神社へお願いしにいくわけだからこれぐらいはしないとね? 一応こうして手土産も買ったし」
「フジテレビのグッズショップに残っていた僕のストラップでしょ? 手土産にならないと思うよー?」
「勉強小僧は人気あるからだいじょーぶだって!」
「照れるー」
 顔を真っ赤にして勉強小僧は体をふるふると震わせた。

 着替えを終えてカズレーザーは楽屋を出た。目指すは賢人神社だ。
「カズ?」
「ファラオさん!」
 局の廊下でお笑いコンビ『馬鹿よ貴方は』の平井“ファラオ”光とばったり会った。カズレーザーはニコニコと笑顔を浮かべながら頭を下げた。カズレーザーのスーツのポケットに隠れていた勉強小僧はより体を丸め、より深く潜り、その存在を消した。
「カズ、今日は一人?」
「はい。なつさんは置いて来ました!」
「そう。この後も仕事?」
「いいえ。プライベートで神社行きます」
「そうなんだ」
「……聞かないんですね。「えー!? カズ、神社行くんだ!? 何で!?」みたいに」
「俺はそんな明るいリアクションは取らないよ」
「まぁまぁまぁまぁ。でも、聞かないは聞かないんですね」
「そうだね。神社行く目的ってだいたい願いがあるから行くものだろう?」
「まぁ~そんなトコっすかね」
 願いの意味合いが若干違うよなー。祈りじゃなくておねだりだし。カズレーザーはそんなことを考えていた。
「別にそういうことは俺が深く聞く意味はないだろう。もし誰かに話したくなったらカズが自分から話すだろうし」
「だから、聞かない?」
「うん」
「さっすがファラオさん! わかってますね!」
「何がさすがかはわからないけど」
「えーっと……確かに今はちょっと、僕が神社に行くワケってやつは話せないです。けど、いつかはファラオさんにも話したいことがたくさんあるんですよ。それまでちょっと待っててもらえますか?」
「待つも何もない。カズが話したくなったら話してくれればいいよ。俺も、その時はちゃんと話を聞くようにするから」
「ありがとうございまーす! じゃあ、また!」
 カズレーザーは再びファラオにおじぎをすると、走り去って行った。
「……廊下は走るな」
 呟くようなファラオの注意はカズレーザーには届かなかった。

 カズレーザーは一つ知ったことがあった。捕まえたタクシーの運転手に「賢人神社まで!」と言っても、「どこですか?」と返される。それぐらい世間では知名度がないものらしいということだ。仕方が無いのでインターネットのHPに掲載されていた住所を指定し、賢人神社まで目指してもらうことになった。

「さぁ、神社につきましたよ!」
 賢人神社の正門をくぐったカズレーザーは、ピンと背筋を伸ばした。神社にはぽつぽつと参拝客がおり、カズレーザーの登場に驚いている様子だった。
「で、神主さんを探さなきゃならないんでしょ?」
 人に見られない場所を選んで勉強小僧を外に出す。
「そうだね、でも……僕、ちょっとやらなきゃならないことがあるんだ」
「え? 何それ?」
「今はちょっと言えないけど、終わったら説明するよ。だからカズレーザー君は先に神主さんと会っていてよ! 僕は後で合流するから」
「わかった」
「じゃ、また後で!」
 勉強小僧はとことこと足早に走り去った。

「神主さんはどこにいるのかな~」
 賢人神社のホームページが映し出されたスマートフォンを片手に、カズレーザーは神主を探していた。もちろんスマートフォンを見る時は立ち止まる。何でも神主は『神田智世』という名前から見るに、女性らしい。写真は載っていないので顔はわからないが、美人だといいなと思った。
「お客様、何かお探しですか?」
 スーツ姿の中年男性がカズレーザーに声をかけてきた。誠実そうな見た目をした男性にカズレーザーは「この人に聞いてみようかな」と思った。
「えーっと、神主さん探しているんですけど、どこにいるんですかね?」
「神主様ですか! 失礼ですが、面会の目的は?」
「そうっすねー。『賢者』が残した『武器』ってやつを貰いたくて」
 カズレーザーがストレートに目的を告げた瞬間、穏やかな笑みを浮かべていた男性の表情が反転した。
「……その言葉を知っているということは、あなたは賢者様の敵ですか? 味方ですか?」
 男性の問いかけにどう答えたものか、カズレーザーは思案した。ただ「味方です!」と答えたところで、信頼されるかどうかは疑問だった。その時、カズレーザーはラサールから貰ったサインのことを思い出した。
「味方ですよ。僕、クイズ界、救いたいんですよ!」
 カズレーザーはカバンから印籠のごとく取り出したラサールのサインを男性に見せ、堂々と宣言した。
「……大変失礼いたしました!」
 サインを見た瞬間、男性は深々と頭を下げた。
「クイズ界を救って下さる選ばれし者だとも知らず、大変失礼なことを!」
「選ばれし者だなんて、大げさなー」
「いやいや、大袈裟なんてことはありませんよ……そう言えば自己紹介がまだでしたね。私は神田知臣、この神社のお手伝いをさせていただいております」
「あー、やっぱり神社の関係者だったんですね。僕はカズレーザー、メイプル超合金というお笑いコンビやってる芸人です!」
「存じ上げております。息子が大ファンでよく見ております」
「マジっすか! 100パー売れているじゃん!」
「それで、カズレーザーさんは『武器』を所望とのことですが……詳しい話は、こちらで」
 カズレーザーは知臣の後についていくことにした。

 知臣の後についていき、到着したのは本殿だった。
「ここで賢者様を祀っているんですか?」
「そうですね……カズレーザーさん、結論から言わせていただきます。あなたに『武器』を貸すことはできません」
 穏やかな笑みを絶やしこそはしなかったが、言葉には強い意志が含まれているように感じた。
「え、僕じゃあダメなんですか?」
「と言うより、今はもう誰にも貸すことはできない状態なんです。今、我々神社側が武器を一番必要としていて……」
「どういう事ですか?」
「まずはこちらをご覧ください」
 知臣はそう言って本殿の扉をゆっくりと開けた。
「あ、これが武器ですか!?」
 本殿の中には四本の太刀が台座に立てられるように飾られていた。太刀は時折弾けるような光を放っている。
「ラサールさん達から何者かがクイズに関わる芸能人たちを襲っている話は聞かれたかと思います」
「聞きましたよ! 『黒い影』ってやつの仕業なんですよね。あと五年前の『知恵の欠片』のこともちょっと」
「それなら話は早い……今、『黒い影』と思しきものは多数存在し、天から地上へ降りようとしています」
(多数存在する? じゃあ俺を襲って来た奴はあれが大ボスとかじゃなくて、雑魚敵みたいなものだったんだ!?)
 カズレーザーはまずその部分に衝撃を受けた。あんなおっかないやつが複数いるのかと思うと不安になった。
「そしてこちらの武器はどこからか降りてくる『黒い影』を天へと追い払うために戦っています。もしこれが一つでも欠けたら力が弱くなりすぎて、邪悪なものを追い払う事ができなくなってしまう。そうなれば黒い影は地上に降りてしまい」
「今の被害だけじゃ済まないってことですね?」
「その通りです」
「そっかー、じゃあ無理なんですね」
「そうですね。あちらの武器を譲ることは、ちょっと」
「そうっすもんねー。だってあの武器が四本ないと……あれ?」
 武器を借りる事を諦めかけたその時、カズレーザーは「四本」という数字にひっかかりを覚えた。
『そう来たか。うーん……俺が使っていたやつはもう返しちゃったし、他のやつらも同じはずだ』
『もし何かあったら辰巳や宇治原、あとはやく君や宮崎あたりに頼った方がいい。あいつらは『武器』を持って戦ったやつらだからな』
 テレビ朝日で話を聞いた時のラサールの言葉を思い出した。
(ラサールさんに、辰巳さん、宇治原さん、やくさん、宮崎さん。この五人が五年前に武器を持って戦った人たち……あれ? じゃあ武器って五本じゃないの?)
 そう、四本では五本には一本足りないのだ。
「ねぇ、知臣さん……武器って五本じゃないんですか? 辰巳さん、宇治原さん、やくさん、宮崎さん、ラサールさんの分で五本。で、あっちにあるのは四本じゃないですか……あと一本はどこいったんですか?」
「……さすがカズレーザーさん、よくお気づきで」
「え、待って。ひょっとして、また僕を試した、とか?」
「そうですね。あなたが本当に世界を救って下さる方なのか見極めさせて頂きました」
「なんですかそれ!?」
「あの四本の刀を見て諦めてすぐに帰るようだったらそれまでだと思いましたから。あぁ、何度も試すような真似をしたのは申し訳ないと思っていますよ。しかし私には神田家を、そしてこの賢人神社を守る義務があるのでそれぐらいはしないとね?」
 穏やかな笑みを浮かべながら堂々と宣言する知臣にカズレーザーの心は飲まれかけた。怒りたくなる気持ちはすうっと消えて行った。
「……知臣さんって何者なんですか? なんか、ただの神社の関係者じゃないですよね?」
 カズレーザーに問われ、知臣は一歩下がった。
「そうですね、改めて自己紹介させていただきます。私は神田知臣。この神社のお手伝いであり、神主である神田智世の夫です。カズレーザーさん、よくぞおこしくださいました」
「めちゃくちゃ態度変わっているじゃないですか!」
「しょうがないですね」
「しょうがないんですか?」
「しょうがないですよ。とにかく、我々はあなたを歓迎します」
「あはは」
 先程以上に深く頭をさげ、丁寧な態度を見せる知臣。カズレーザーは呆れたように笑うしかなかった。

「改めて結論から言わせていただきますと、カズレーザーさんに武器を貸すことが出来ないのは変わりありません」
 本殿の扉を閉めながら知臣は宣告した。
「結局だめなんですか!? あの四本じゃなくて、残りの一本も!?」
「はい。その残りの一本なのですが、そちらは先約がありまして、つい先日、その方にお貸ししたのでここにはもうありません」
「先約って誰ですか?」
「あなたもよく知っている人ですよ……宇治原さんです」
「宇治原さんかー……じゃあ、しょうがないですね」
 さすがのカズレーザーもこれにはお手上げだった。武器が欲しくてしょうがなかったが、別の手段を考えるしかない。勉強小僧と後で合流したらちゃんと話さないとな、と思った。

「わざわざ来ていただいたのに何もできなくて本当に申し訳ありません」
「知臣さんのせいじゃないので」
「代わり……というのも変ですが、カズレーザーさんに紹介したい方がいます」
「え、誰!? お見合い!?」
「そういうのではないですよ。おそらく、あなたと同じ側にいる人間です……こちらへ」
 知臣が歩き出す。カズレーザーはそれについていく。
「カズレーザーさんが来る前に、こちらを訪ねて来た方がいらっしゃいましてね」
「はぁ」
「その方が所望したのは『五年前の『知恵の欠片』について書かれた本』でした。当時何があったのか詳しく知りたいと。そして、今と関係があるのかを突き止めたいと」
「!」
 その話が本当ならば、その人は自分の味方になってくれるかもしれない。興味が湧いた。
「その人に本、貸したんですか?」
「はい。今もその本を読みふけっているかと思いますよ……あぁ、やはりそうでしたね」
 そうしてたどり着いたのは本殿から少し離れた場所にある蔵だった。蔵の前で座り込み、本を読んでいる人がいる。カズレーザーにはその人に見覚えがあった。だから、思わず名前を叫んだ。
「……志島君!?」
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Author:特効さん
主にヘキサゴンⅡクイズパレード(特に里田まいのおとぼけ)をネタにしていました。現在はブログでクイズ番組(主にQさま)のSSを書いているよ。pixivやっているよ。twitterもやっているよ右側にあるリンクとかから飛び込めるよ。下の方にメールフォームがあります

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